XをはじめとしたSNSや、はてなやnoteなどの大手ブログツールなど、便利、安価かつ高機能な情報発信のためのツールはいくらでもある2025年。そんな世の中で、なぜ安くはないコストをかけてまでVPSを借り、自身のドメインを取ってまで、いささか時代遅れとも言える形でブログを再開しようと思い立ったのか。大小さまざまな理由はあるが、敢えて挙げるとすれば次の3つの「自」に落ち着く。
1つ目は、自由に発信できるということ。
誰も彼もが当たり前のように情報発信できるようになったことの裏返しに、それらを取り締まる機構も発達してきた。しかしここ数年を振り返ってみると、言葉狩りに近い行き過ぎた規制に雁字搦めにされているようにも感じられる。
事実を述べただけにも関わらず、特定の人間が「気に食わないから」という理由で停止もしくは凍結に追い込まれるSNSのアカウント。本来は必要ないはずなのに、収益のために無難さを求めた結果、物騒な漢字に伏字が多用される動画。今や用意されたプラットフォームの上で活動するためには、時に本心を抑え込みながら、いくつもの制約を乗り越えなくてはならなくなってしまった。
もっとも、それらプラットフォームを全く使わないわけではないし、ましてや言葉狩りの心配がなされるようなセンシティブな話題をこのブログの中で展開するつもりも今のところはない。そもそもこのブログも数々のインフラから成り立っているわけで、公序良俗に反する内容をあけっぴろげにすることは憚られる。あくまで精神衛生的な観点で、言論の自由を保ったまま、要らぬ心配をせずに文を綴るための場所として用意したつもりである。
2つ目は、自分自身で運営できること。
これはどちらかといえば、大手ブログツールへの挑戦だろうか。ブログの歴史は長いが、現存するブログツールは淘汰を経て生き残っている者たちである。黎明期を支えたいくつかのブログツールは、営利コストという壁に突き当たり惜しまれつつも消滅してしまった。有名無名関わらず綴られた、あまたの記事とともに。
記事を書く立場として、かのツールに頼るとすれば、自らではコントロールできない理不尽なサービスの終わりを常々意識することになる。自分自身で運営できれば、その終わりはある程度は自分自身で決められる。安くはないコスト、金銭だけではなく、運用するために保守作業も含めてを自らが被る事になるが、長く続ければそれは瑣末な事だと思っている。
自分自身で行うサイトの運営、便利かどうかと言われれば、まあ不便以外の何物でもない。自力で色々試そうものなら、あれこれ手順を踏まなくてはならない。面倒臭いしがらみから逃れようとしたつもりが、別の面倒臭い事ばかりに頭を悩まされているというのは皮肉である。改めて2025年はなんて恵まれているんだろうと、サイトの立ち上げ時は何度思った事か。
そして3つ目は、自動文章生成への些細な抵抗ができること。
2025年は、LLM(大規模言語モデル)に基づくAI(人工知能)が当たり前の存在となってもはや久しい。あと幾許もしないうちに、ChatGPTやgrokらが吐き出した文章は我々人間が綴ってきた文章を超えるだろう。ひょっとすると、もう超えているのかもしれない。
AIはほとんどの面で人間を凌駕するようになっていて、いよいよ我々は莫大な光熱費を浪費しながらAIの傀儡になりつつある。せっかくの文明の利器を使わないわけにもいかず、自分自身ももはやAIの支援を受けながら日々をこなす身である。
しかしどんなにAIが頑張ろうが、やはりAIは人間にはなり得ない。限りなく近づけるかもしれないが、人間の欠陥までも模倣しようとはせず、人間の弱点を克服する存在になるだろう。一方生物のヒトなんかは最適とは程遠く、非合理的で欠陥だらけなので、AIのように完璧な文章を書く事など無茶というものだ。
…もはやプラットフォームがどうこう関係ないのでは?と思ったかもしれないが、むしろここが切っても切れない部分というのが持論である。既にAIは、人間の書いた文章を添削するという芸当を持っている。SNSや大手プラットフォームには、近い将来にAI支援機能が搭載され、まもなくAIによる添削を経たテキストで埋め尽くされるに違いない。このサイトにはそんな機能はないし、搭載される予定もない。今この文章をChatGPTに投げればイイ感じになって返ってくるかもしれないが、その文章を見た自分は思いもしない添削結果に憤慨し、やり直しを要求し続けるに違いない。そんな事をするのは面倒臭い。面倒臭い状態を保ったままにしておけば、とりあえずは思ったままの言葉だけがここに残る事になるだろう。
終わりに、より具体的な事情を挙げておくと、少なくともLLMベースのAIはニッチな人間活動の生態に弱い。構造的に、過去に蓄えられてきた膨大な情報に基づいて成り立っているからである。徒に万人受けするような話題をするのではなく、AIも見逃しちゃうようなドがつくほどローカルな話題をぶちまけて、この世界の特定の誰かに響くようなサイトになったのなら占めたものだ、と思っている。
いつの日か、ここの内容がAIに学習され、その知識の一部になるようものなら、それはそれで愉快な事じゃないだろうか。